キルミーアゲイン感想

 

 

あまりにも良すぎたキルミーアゲイン。

 

 

 

大阪公演3公演。全日見せていただき、こんなにもいい作品に出会えたことが嬉しくて。

 

 

 

最後のあの怒涛のような悲劇のところだけでも今の気持ちを綴りたくて、書きました。

 

 

 

千穐楽も終わって、ネタバレしてもいいだろうと思い、思いっきりネタバレしてるので、DVDを買って見ようと思ってる方はお気をつけください。

 

 

 

 

 

 

 

吹奏楽の子たちが、大蔵(小林けんいち)がたにし座を使う許可をもらうのと、薮中(真田佑馬)と河本(丸尾丸一郎)が来るのを待っていたら、津波が押し寄せてきて一瞬にして命を奪われていったあまりにも辛すぎるシーン。

 

 

吹奏楽の子たちが楽しそうに演奏を始めるのかと思いきや、突然ステージが薄暗くなり、お腹に響いて地面が揺れるような地響きと大音量の中、明らかに水面が上昇してくる演出。

 

 

見ているとまるで自分が本当に水に飲み込まれてしまったのではないかと呼吸を止めてしまうレベルで息苦しくなる。

 

 

震災を経験した母は、あのシーンで怖くなって目を瞑ったと言っていた。

 

 

 

 

そしてそこから17年越しに明かされる、その時のみんなの本当の行動と気持ち。

 

 

 

17年間後悔していた張り裂けそうなくらいのそれぞれの気持ち。

 

 

 

 

ー緊急の避難指示が出ている中、たにし座に明かりがついていたことに気づいていたが、明かりを消し忘れてるのだろうと見過ごしてしまったタガメ(メガマスミ)

 

 

ー薮中や吹奏楽の子たちがたにし座に入るところを目撃してたのに何もしなかった松田(今村花)

 

 

ーたにし座を貸して欲しいと許可をもらいに行ったら怒られて、もうそのたにし座にみんながいることを言えず、寒いし言いに行かなくてもみんな帰るだろうと一人帰ってしまった大蔵。

 

 

ー薮中を呼びにいけと言われていたのに、自分が好きなジャッキー(内藤ぶり)が薮中のことを好きだということに嫉妬して、薮中を呼びに行ってなかった河本。

 

 

ー悲劇が起きてるなんて知らず、家で脚本を書いていた薮中。大していい話も思い浮かばず寝て。次の日にみんなが死んだことを知らされたこと。それが信じられなくて、これは物語だって思い込んで、そこから17年間経っていたこと。

 

 

ー俺だけは忘れてはいけないとずっと村を出ずにいた河本。だが本当は他の生き方がわからなかっただけだということ。

 

 

 

 

 

そうやってみんながあの時の気持ちを独白する中、亡くなった吹奏楽の子たちが

 

 

 

 

「おせーよ!!」「しっかりしろよ!」「もういねぇんだから!!」「もう大人でしょ!」

 

 

 

 

ってみんなの背中を押し始めるの無理。

死ぬほど泣くわ。これ。

 

 

 

 

 

そこから吹奏楽の子もいれながらみんなで演奏して歌って、薮中がドラム叩きながらめちゃくちゃ顔クシャクシャにして泣き顔見せたりするのやめて。しんどいよ。苦しいよ。

 

 

 

歌の合間のセリフ、

 

 

「いってきますいってらっしゃい」

 

「でも立ち止まりたくなったら帰ってこいよ」

 

「ただいま、おかえり」

 

 

 

という言葉とその時のみんなの表情と、

 

 

 

 

 

17年越しにやっと言えた

 

 

 「今、卒業します!!」という

 

 

あの時言えなかった言葉と。

 

 

 

 

 

「フレー!フレー!寂しくなったら帰ってこい!!!!」

 

のみんなの魂の叫びは泣かずにはいられない。

 

 

 

思い出すだけでまだ泣ける。ずっと鳥肌立ちっぱなし。

 

 

 

何回見ても、辛くて、苦しくて、しんどくて。

 

 

 

 

だって、本当はここに吹奏楽部なんていないんだもん。

 

 

こうやって、薮中が作った舞台という脚本の中で一緒に歌えてるんだよ。

 

 

 

 

 

それで平和に終わるのかと思いきや、そこから突然照明が落ちて、「舞台は中止だ!!!!」ってたにし(谷山知宏)に止められて、工事の人たちがセットを強制的に運びだして。

 

 

そこで、たにしがあの悲劇の日、いつも不法侵入していた吹奏楽部の子たちに怒って、あんなことが起きるとは知らずに外から鍵をかけてしまっていた事実が明かされる。

 

たにしは、そのせいで吹奏楽部の子たちが亡くなってしまったのだと抱え続けていた。

 

 

そして、もう思い出したくなくて中止にしたくて妨害していた。

 

 

「もう俺を解放してくれ!!」と叫ぶたにし。苦しかったんだろうな。

 

 

 

そしてたにしが暴れたその時。

 

 

セットで立てかけていた長い棒が薮中の方に倒れてきて、「健ちゃん(薮中)!危ない!!」と薮中を庇うかのように覆い被さったやまめちゃん(菜月チョビ)。

 

 

みんなが駆け寄った時、薮中が必死に「やまめちゃんが俺を庇って!!」と叫ぶけど、そこにやまめちゃんはいなくて、残されていたのはやまめちゃんがいつもかぶっていた帽子だけだった。

 

 

やまめちゃんは、人魚だった。

 

 

 

 

やまめちゃん、人間を守るために、泡となったんだね…。

 

 

 

 

「やまめちゃん!!!」とパニックになる薮中だけど、その一方、他の人の記憶からはやまめちゃんは消えてしまっていて。

 

 

一人「やまめちゃんはどこ!?!?」となる薮中に対してみんなから「やまめちゃんって誰?」「何言ってんの??」と返されるの、見てて苦しい。

 

 

 

その後は薮中の作った舞台が大成功し、みんなが帰り、山根も東京へ帰り、大蔵も去り。

 

 

 

薮中と河本が最後にホウキを使って、昔のシーンを再現するかのように楽しんで斬り合いをするんだけど、これ同じことを冒頭でもやっていて、その時は薮中だけ斬られるのに、最後は河本のことも斬ってあげるし、最後2人で斬り合って倒れるのよ。

 

 

 

ここが、めちゃくちゃ深い。

 

 

 

 

昔、薮中は、自分が舞台上で死んで、起き上がった瞬間にお客さんの自分を見る目が「すごい!」に変わっていたことをずっと根底に持っている。

 

 

こうして舞台上で死んだあの日から、薮中の中で人生が変わった。

 

 

だが本当は河本が死ぬはずで、それを横取りしてしまった薮中。河本は、自分があそこで死んでいたら、自分の人生が変わっていたのではないかと思っていた。

 

だから、「俺を殺してくれ!!」「俺が死んだら良かったんや!!!!!!」と二人はそうやって本気で喧嘩をしていたシーンも中盤で出てくる。

 

 

だからこそ、この最後の二人の斬り合いは、今までのことを断ち切り、お互いがこれからの人生を変えるために、生まれ変わるために、必要だったわけで。

 

 

だから初めて、どっちも斬り合った。

 

 

17年前に引っ張られず、前を向いて進むためのものだったんだろうな。

 

 

 

それを証明するように、斬り合って倒れた後、2人が起き上がった時に、お互いが決意を固めたような表情をしてるんだもん。

 

 

起き上がって、「よし、俺東京帰るわ」って言う薮中に、帰る表現が東京になるのかと少し寂しさを覚えたけれど。

 

 

「いつでも帰ってこい!」と返す河本が。

 

″ただいま。おかえり。″を言い合える薮中の大切な仲間で。

 

 

 

 

最後、夕日に照らされながら東京に帰る前。

 

 

 

歩き出す前に振り返って、目に焼き付けるかのようにたにし座を見つめる薮中の切ない目と。

 

 

夕日に向かって歩き出したときにまた何かが壊れていくような嫌な、耳を塞ぎたくなる音にふと立ち止まってしまう薮中と河本。

 

 

夕日をじーっと見つめながらその音を聞き、すくんでいる足を振り切るようにして河本を抜かして前に突き進む薮中とその後ろをついていく河本。

 

 

2人が去った後、ステージが少しずつ壊れて行く演出があって暗転。そのまま余韻を残して終了。

 

 

 

 

結局、村を救うことはできなかったのだろうか。

 

 

 

この薮中の舞台を最後に取り壊しが決まっていたのだろうか。

 

 

だからあんなに最後、苦しそうに振り返ってたにし座を見ていたのだろうか。

 

 

たにし座が壊れてしまう嫌な音が後ろから聞こえて、でも振り返らずに前を進んだのだろうか。

 

 

 

それが明かされることはないけれど、とにかくカーテンコールを見ながら苦しくて辛くて。

 

 

 

 

 

キルミーアゲイン。

 

 

 

″もう一度殺してくれ″

 

 

″もう一度殺して、人生を変えてくれ″

 

 

 

観終わった後、題名の深さに言葉を失った。

 

 

 

冒頭の何もないようなあの薮中と河本のホウキでの戦いがこんなにも最後にも響く伏線になるとは。

 

 

 

 

 

あんなに前半みんなお笑い見にきたかのようにゲラゲラ笑ってたのに、こんなに泣く?ってくらい終盤は泣いてる会場。

 

 

 

劇団鹿殺し、凄すぎる。

 

 

 

あまりにも凄すぎる。

 

 

 

こんなに余韻を感じる舞台は今まで出会わなかった。

 

 

何度だって見たいし、驚くほどに見れば見るほど涙が出る。

 

 

一回目はただただ展開に驚くけど、二回目からは悲劇を知っているだけに本当に泣ける。

 

 

これは数回見るべき作品だった。

 

 

 

DVDも出るしこれからも何回も見れるんだろうけど、あの地響きや音量や迫力や息を飲むあの水害のシーンは、生の会場でないと味わえないものだろうと思うだけに、終わってしまったことが悲しい。

 

 

毎年やってほしいな。

 

 

 

この作品を全国的にもっともっと知ってほしい。

 

 

 

みんなに見てほしい。

 

 

 

そう思った。

 

 

 

 

 

キャストのみなさん、スタッフのみなさん、本当に本当にお疲れ様でした。

 

 

最高の作品をありがとう。

 

 

一生忘れません。

 

 

 

 

 

 

そして真田佑馬さん。

 

 

 

 

 

魂の叫びをありがとう。

 

 

 

個人的に、勝手にさなぴー自身のこととも重ねてしまった回がありました。

 

立ち止まってしまいそうになりながらも一歩前に踏み出したところとか、初めてみんなに凄いという目で見られたことが忘れられないところとか、「いってきます」というところのさなぴーの表情とか、「寂しくなったら帰ってこい」や「卒業します」のところも。

 

突然、たまたまだけど、ものすごい重ねてしまって、胸にグッときて、鼻の奥がツーンとしてきて、泣いた回もありました。

 

 

薮中という役があまりにもピッタリだったな。

 

 

 

こんな素敵な作品に出会えたのは、さなぴーがいたからです。

 

 

 

カーテンコールで毎回去る前に絶対に菜月チョビさんを手で指して、あくまでもチョビさんと丸尾さんを立てるさなぴー。

 

 

千秋楽で、「20周年おめでとうございます!」と言って拍手を送ったさなぴー。

 

 

今作品で主役の立場だったにも関わらず、謙虚で、一歩後ろに下がってるさなぴーのその姿勢が大好きでした。

 

 

 

 

本当に、ありがとうございます。

 

 

 

 

役者・真田佑馬。最高でした。

 

 

 

 

幸せをありがとう。

 

 

いつかまた劇団鹿殺しさんの舞台を観れますように。

 

 

 

 

 

劇団鹿殺しさんの舞台で私を

 

 

もう一度、殺してくれ。

 

 

 

 

2021.10.17 パセリン